大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成10年(ワ)224号 判決

原告

小田切千里子

被告

日比野覚嗣

ほか一名

主文

一  原告は、被告らに対し、金五九万一六八三円を超える債務が存在しないことを確認する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分して、その三を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

原告は、被告らに対し、金四九万一六八三円を超える債務が存在しないことを確認する。

第二事案の概要

本件は、原告が、左記一1の交通事故の発生を理由とする原告の被告らに対する損害賠償債務の存否及び額の確認を求める事案である。

一  前提事実(特段の記載のない事実は争いのない事実)

1  交通事故

日時 平成九年一〇月六日午後二時四〇分

場所 三重県桑名市大字安永九二〇番地

加害車 原告運転の普通乗用自動車

被害車 被告日比野覚嗣(以下「被告覚嗣」という。)運転の被告日比野博子(以下「被告博子」という。)所有普通乗用自動車

態様 原告の過失による追突(甲一)

傷害 被告覚嗣が腰背部打撲傷を負った(乙四)。

2  被告らの損害(争いのない部分)

代車使用料 一〇万八〇五五円(既払い)

治療費及び文書料 一万九〇五〇円(既払い)

3  責任原因

原告は加害車を自己のために運行の用に供する者である。

4  交渉経過

原告は 本件事故後の平成九年一〇月八日ころ、被告ら宅を訪れ、被告らとの間で損害賠償につき話し合った。

二  争点

(物的損害)

原告は、被告博子の車両損害につき、修理費見積額四九万一六八三円である(予備的に評価損として修理費相当額の一〇パーセント相当額を加算する)と主張するのに対して、被告博子は、平成九年一〇月八日ころの被告宅での話し合いの際、原告が被告博子のために新車を購入して車両損害に代える旨の合意が成立したから新車相当額であると主張し、右の合意がないとしても修理費のみではまかなえない評価損があると主張する。

(人身損害)

被告覚嗣は、むち打ち症につき五〇万円及び体調不良が継続していることにつき事故後月額五〇万円の慰謝料を主張し 原告はこれを争う。

第三争点に対する判断

(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証についてはその旨記載することを省略する。)

一  物的損害

1  新車購入合意の存否

被告博子は同人の本人尋問において、事故の翌日である平成一〇年一〇月七日に電話で話したときと、翌八日ころに被告ら宅に原告が来たときに 原告が「新車を買って弁償してやる。」と言った、八日には来てすぐに原告から新車購入の申出があったと述べて車両損害につき新車購入の合意が成立したと主張する。

しかしまた、右本人尋問の結果によれば、同日の話し合いは一時間くらいかかり、原告はきちんと話をしようと言うことになるとはっきりせず時間がかかった、また、同月一〇日ころから連日のように原告に電話をかけて話し合ったが原告から買替えのための協力は一切得られなかったとも述べており、これらの経緯及び被害車の状況(日産サニースーパーサルーン一五〇〇、本件事故当時新規登録後一年六月、走行キロ数八八〇九キロ。甲三)、被害車の損傷の程度が一見して重大とまでは見えないこと(甲四)、修理費見積額も四九万一六八三円であり、また見積書の作成自体同月八日であることも合わせて考えると、被告博子の同月八日に直ちに新車購入の合意が成立したとの供述は信用することができず、他に新車購入の合意があったと認めるに足る証拠がない。

2  修理費

甲第三号証によれば、被害車の修理見積額は四九万一六八三円であることが認められる。

3  評価損

前掲甲第三号証、甲第四号証及び弁論の全趣旨を総合すると、被害車の損傷の程度は、前記2の修理見積にある修理を行ってもなお損害が残存するであろうことが認められる。そして、その額は右の修理見積額に照らすと五万円が相当である。

4  小計

したがって、被害車に係る損害は五四万一六八三円と認められる。

二  人身損害について

乙第四号証及び及び弁論の全趣旨を総合すると、本件事故により被告覚嗣は腰背部打撲の傷害を負い、海南病院に一日通院したことが認められる。被告覚嗣はむち打ち症であり現在も症状がある旨の主張をするが、これを認めるに足る証拠はない。そこで、右の傷害の程度に照らすと、本件事故による通院慰謝料は五万円をもって相当と認める。

三  結論

そうすると、本件事故に係る被告らの損害は、争いのない既払分を除き合計五九万一六八三円と認められるから、原告の請求はこの額を超える範囲の債務のないことの確認を求める範囲で理由がある。

(裁判官 堀内照美)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例